地球へ…
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地球へ…

竹宮惠子

竹宮惠子先生の代表作と言えばこれだと思う

2024年1月25日
宇宙、地球、人間、次の人間。機械(コンピューター)に自分達を任せる人間に異を唱えること。選別、管理、意思。共存か対決か。
朝日パノラマ社の月刊誌マンガ少年連載時代、本作品と、手塚治虫先生の「火の鳥」を読むためにずっと買っていた。
長く内容を忘れていたので、今回電書買い直し。
描かれてる宇宙船メカや宇宙空間に今改めて本作のスケールを、思う。私にはキース自身が内に抱える矛盾が最後のシーンでは不完全燃焼感はある。
地球という星の環境的限界と、それを何とかしようと試みた挙げ句の未来社会の、極端な「歪み」描写には、コンピューターにその御託宣を仰いだり、フィシスの占いに揺れたりといった行動はそぐわない。その割り切れなさが、現代人にもまさしく通じる迷いとして、如何にも人間とはかくも脆い生き物であることを突きつけるようだ。
思念波を操れたらなんか格好いいと思ってしまう自分でも、いざ身近にそれをしてくる人が居たら気味悪いと思わないでいられるだろうか。

踏んだことのない地、地球への望郷(?)、それを具体的イメージ出来る根拠それ自体がそもそも作られたもの、あおり立てられたもの。
ナスカの悲劇。それを経て沸き起こる目的意識。
ジョミーを突き動かすのは遺志の尊重、で片付けてストーリーは収束できるのか。

SFによくある、巨大化して人智を超えたコンピューターの存在が本作品も悪役と言えるが、人工生成AIを登場させて新たなおもちゃよろしく嬉々として楽しむ現代人は今どこの辺り?

最後まで屈せずあくまで戦士だったジョミー、作者は彼の役割を決めていたからかもしれないが、私はもっと無邪気に青春を楽しむ光景をもっと沢山見たかった。しかしブルーも、トォニイにしても、そして勿論ジョミーも、強い思念波の持ち主はそれが生命力を持つ、という意味で存在を続けるのもまた上手いなぁと思う。

とにかくこの作品で私は竹宮惠子先生という漫画家は宇宙物で足跡を残したと感じる。
忘れていた本作品を再読して本当に良かった。
第25回(1979年)小学館漫画賞受賞。
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