魔道祖師
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魔道祖師

墨香銅臭/鄭穎馨/千二百

心の琴線に触れる珠玉の作品

ネタバレ
2024年1月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ あまりの面白さに恋に落ちてしまったかのような心境です。読み返す度にその深い世界観の虜になっています。ドラマの『陳情令』も視聴してみたくなりました。それほどにドはまりしました。

なぜこれ程までに心を奪われたのか。まず修真界を舞台としたファンタジーの設定がよく練られていて息つく暇もないほど非常に面白いのです。そして墨香先生の文章が天衣無縫で驚嘆するほどブラボーなのです。中国語独特の表現(一言九鼎等)も雅で趣があります。魅力ある登場人物を生み出し完全に掌握するその手腕、お見事です。主要登場人物には名・字・号があり、藍忘機・藍湛・含光君のように三つの名称を覚える必要がありますが、それには意味があります。最初は人物相関図を確認しながら読むということが必要かもしれません。しかし気がつくと自然に頭に入っているのでノープロブレム。

4巻は特に素晴らしくお気に入りです。雲夢の蓮花塢を訪れた際に魏無羨が藍忘機に自分の育った環境を案内し、思い入れのある木にするすると登り藍忘機の胸元へ飛び降りた場面は最高潮に感動しました。魏無羨と藍忘機の紆余曲折を経た関係の顛末には「1~3巻までじっくり読んできて良かった」と思えるようなご褒美が待っています。番外編ではその後の2人の幸せな様子も官能描写込みで堪能でき、読後の余韻は極上です。

魏無羨殿あなた様はなんと人たらしなのでしょう。
藍忘機殿あなた様はなんと高潔で純粋なのでしょう。あなた様の揺るぎない愛情の深さには泣けてしまいました
。2人の年少の頃からのやり取りが面白く(魏無羨が藍忘機をからかう様子がたまりません)また一度は悲しい別れを経た後の再会以降は胸が高鳴るばかりでした。2人は素敵で無敵。墨香先生は主人公が「同じ過ちは繰り返さない」という一皮剥けた様を描くのが秀逸だなと思います。(『天官賜福』の太子殿下の昇天前と後の様子や、本作品の魏無羨の献舎前後の様子は違います)

家族や(義)兄弟、師弟の情というもの、友情、恩義、道理、愛情様々な要素が絶妙なハーモニーを奏で心を激しく揺すぶられました。番外編で魏無羨が金凌のことを親しみを込めて「阿凌」と呼び金凌も「なんだよ」と返事する仲にまでなったことも心が温かくなりました。忘機琴さながら心の琴線に触れるような作品です。まだ当分の間その世界観に浸り酔いしれたいと思います。
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