ホームレス・ロンリネス
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ホームレス・ロンリネス

七海リキ

おじさんと若者の再起の話

ネタバレ
2024年2月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 完璧に見えて実は幼少期に父親から受けたスパルタ教育の為に他人を信用していない正木と、過ちから自分の独り善がりに気づき無気力になってホームレスになり、時々ウリをして金を稼ぐ孝彰のお話。

両思いになるまでに追って追われて追って…という展開ですが、人の心の傷といいますか、正木は父親からの心の傷を孝彰と出会い乗り越えていく反面、孝彰に関しては正木と出会ったことにより本当にドン底からの再起を目指すので、ここに描かれてる以上に本人らは相当な努力をしたと思いますよ。
正木の家の片付けが…というのは欠陥というよりはセルフネグレクトに近かったんじゃないでしょうか。父親の期待に応えなければならないプレッシャーからその他を放棄せざるを得ない環境だったので、正木も最初はホームレスを嫌悪していたけども、危うい所は正直あったと思うな…反して孝彰は掃除も料理も出来る人。そんな人が離婚されて真っ白になっちゃって恐らく高給どりだった職も家も失ってホームレスになり、ノーマルなのに男相手にウリやって道端に落ちてる誰が吸ったかわからないタバコを「ラッキー」って言って吸ったり、炊き出しには行かず廃棄のナンと仲間が釣ってきた川魚を焼いて乗っけて野草をふりかけてピザ〜って言って喜んで食べている。所詮勝ち組と言われてきただろう人間が、それらを受け入れて生活できている程に、自分の正義に則って作ってきた家庭がぶっ壊れた際に受けた心の傷はデカかったのね…となる。
お互いに傷ついた者同士、足りない部分を支え合って…いうて孝彰は覚悟と家(金)があれば生きてけるんだろうけど家に誰かが居る温かさが無いと生き残りはできないし、正木も殻に閉じこもってる自分に寄り添って「違うよ」って言ってくれてる人が居ないと長くは生き残れなかった者同士なんだよね…

これからさらに大変なのは孝彰。正木は大丈夫っていうけど、社会は「人生の経歴」を見てくるので何社も落ちまくるだろうし、拾ってくれた先々でホームレスだったことで嫌な場面が出てくるだろうが、ホームレスになって得たものと本来の気質、そして正木との大切で温かな生活を糧に逞しく生き残っていってほしいな…


世知辛い話もありますけど、これは2人の男の再起の話。寂れた一番星の輝きが本来の光を取り戻す様をご覧ください。

◯追記/紙の小冊子特典…!その後が気になる方は書店限定も是非ゲットしてみて下さい!
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