雨傘で凌げないほどの恋
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雨傘で凌げないほどの恋

ARUKU

ARUKU先生の真骨頂、健気不憫受けの極み

ネタバレ
2024年3月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 極上の健気不憫受け、五映と、高校時代に彼をアウティングしたヒエラルキートップの天花寺。同級生の一筋縄ではいかない再会愛です。五暎は天花寺のアウティングで引き篭もり人生を決定的にされて、天花寺はぽろっとこぼした言葉が、どれ程相手を傷つけたのかをじわじわ理解する。両片想いでもあるし、執着愛、一途愛でもある。五映と天花寺の想いとは別のところでの、五映をえぐる人や出来事が出てくるのですが、それが結構グロテスク。ARUKU先生の作品に出る女子は、たいてい良くない。天花寺の元嫁と、天花寺に横恋慕する同僚の二人、このどちらもかなりの不快指数。この作品の良心や奥ゆかしさは、全て五映に持って行かれてるようです。他人を傷つける事に、微塵の呵責も無く揺るがない自分本位、逆に羨ましいかも。周囲におぞましさがある分、五暎の純粋さが強く感じられます。結構、厳しい現実と五映は戦うんですが、ARUKU先生の作品なので、ふわっとしたファンタジーっぽい雰囲気があり、読んで苦しく感じられることは無いし、少々ズレた攻めの天花寺の執念の溺愛は満足します。
五映は天花寺のアウティングをされる前から、可愛い容姿からイジメを受けており孤独でした。本人に何の非も無く、ただ可愛さが浮いていて、思春期の子供達には微妙な存在だったんだろうと想像します。その五映に、天花寺はゲイだと言ってしまった。ぽろっと。それが五映にとって間違いでなかったので、アウティング。天花寺としてはホントにぽろっと口をついてしまった、だけの事が、五映の人生を変えてしまうのだから、アウティングって怖い。悪意を持ったアウティングで無かったことが、なんか、深くて。ARUKU先生節というか、先生らしい作風ですが、イジメもアウティングも、結構深く刺さりました。
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