このレビューはネタバレを含みます▼
評価は低いのですが好きな作品。中原先生の作品は描写が美しく、キャラクターが魅力的なのでこの作品もその点は例に漏れず好きでした。ただ、勢いよく読んでいる時にふと流れを止またしまうくらい気になる点がいくつかあり、評価を下げました。
1番大きいのはこの世界の軍や法の在り方が掴めなかった点。軍国主義ではなく民主主義でありながら軍に強大な力がありオメガの保護を盾に非人道的な行いが罷り通っているのは文民統制の原理からは乖離していて違和感を感じます。一応オメガやアルファに関する法律に基づいての沙汰のようなので、法治国家であるのかと思えど、その割に黒瀬の射殺が杜撰なフローで決定し、上沼の一存で早まるということにも不自然さを感じました。Sオメガの法整備が進んでいない中色々が上沼の都合の良い方に進むのも、軍の在り方がいまいちよくわからないのですんなり受け入れられませんでした。最終的に人権侵害で警察が殴り込んできて大団円というのも乱暴な気がしました。
次にSオメガの立ち位置。「破滅の血」と言われる理由が弱すぎるかなと。人類の発展にはアルファが必要。でも長期視点ではオメガも必要だから100%アルファを産むSオメガは破滅の血だよね、という論理展開かと思いましたが、果たしてそうなのか。例えばアルファはオメガからしか生まれず、Sオメガは繁殖能力が高く、且つSオメガから生まれたアルファの家系からはその後一切オメガが生まれないということなら納得できますが、1代限りでSアルファとSオメガが番ったって別にいいじゃないと思ってしまいました。
あとは久住の存在。黒瀬との逢瀬の手引きをした際に「自分は上沼に信頼されてる」と宣うていますが、その前に五色の肩を持つ発言を激しく叱責されているシーンがあったので違和感がありすぎて…。そして黒幕としての紹介と突然語られる上沼への愛…。スピンオフあるでしょうか…。
他にも細かな点が気になって集中できませんでした。頭が悪くて色々読み取れてないせいなのかも…。
前述した通り、やっぱりキャラクターは魅力的!子供達はかわいいし、黒瀬が実は清らかな身体だったとわかった日には、何この子かわいい!と地団駄踏みました。奈良先生のイラストも秀麗で、総じて続刊読もうと思うくらいには気に入っています。