虹は夜光に煌めく【電子限定描き下ろし付き】【コミックス版】
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虹は夜光に煌めく【電子限定描き下ろし付き】【コミックス版】

墨矢ケイ

虹色に煌めく未来を手に

ネタバレ
2024年3月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 気ままなバイクの一人旅をしていた中嶋が道に迷い、山道で出逢った神澤治郎の家に泊めてもらうことになります。山菜を入れた背負子にシメた鶏をぶら下げた神澤は大きな屋敷に一人で住んでおり、若いのに家では着物を着ている風変わりな男で、他の場所に行ったことが無いからと中嶋から都会の話を興味深そうに聞くのでした。しばらく滞在することにした中嶋は、神澤の純真さと共に、神澤の家が鬼屋敷と呼ばれ、町の人達から忌み嫌われていることを知ります。全てを諦めたような神澤の寂しい笑顔を見た中嶋は、そこにかつての自分を見出します。中嶋もまた嫌なこと、辛いことを無理に作った笑顔で誤魔化してきた挙句、心に深い傷を負い、全てを捨てて旅に出てきたのでした。神澤の家にまつわる奇妙な伝説と母親の出奔、田舎ならではの閉鎖的な考えとの犠牲になってきた神澤は、それでも母親を大切に思っており、それは母親の形見の壊れてしまった万年筆の虹色に煌めく美しい螺鈿細工に象徴されています。単話版だと読みホでも読めますが、描き下ろしの『虹は君の横で煌めく』で螺鈿細工と二人の未来とがきちんと繋がりますので、コミックス版をお勧めします。
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