夜間逃避行
」のレビュー

夜間逃避行

久我有加/絵津鼓

孤独を抱える訳アリな二人のロードノベル

ネタバレ
2024年3月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ UFOを見るために海辺の田舎町へと車を駆る内野成一は、偶然入った定食屋で、キャップを真深く被った青年ナトリと相席となります。ナトリもまた同じ目的で同じ場所に向かっていることがわかり、成一はロードバイクがパンクしてしまったナトリを車に乗せて駅前のビジネスホテルに向かいます。ぽつりぽつりと交わされる会話の合間に、成一の脳裏に婚約者と友人に裏切られて一人で披露宴にでなければならなかったこと、理不尽なリストラにあったことなどが悪夢のように蘇ってきます。運転中なのにぼうっとしてしまう成一に、無愛想なナトリはため息をつきながら、その後も行動を共にするのでした。寡黙で影のある23才のナトリと、恋人•友人•会社に裏切られた26才の成一との成り行きで始まる短い旅の物語は、やがてある事件とその加害者、被害者それぞれの家族の心情がクローズアップされます。重いテーマですが、成一の真っ直ぐな明るさと人懐っこさが救いとなります。二人のその後の人生を大きく変えた出逢いと旅は、一緒にはいなくても離れることのない強い結びつきの大人な恋となります。
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