源氏物語 あさきゆめみし 完全版
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源氏物語 あさきゆめみし 完全版

大和和紀

人の業とはなんとも‥ドラマチックなお話

ネタバレ
2024年4月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 文章で読むには理解不能な古語訳だったり、現代語訳でも訳者それぞれの解釈で微妙に違い、最後まで読むことができずにいた「源氏物語」。それを大好きな大和和紀先生のお手による漫画として読める幸せ。若かりし頃の通常のコミックス、その後まとめられた文庫版と読みましたが、残念なことに都度手を離れてしまいました。何度も読んできた「あさきゆめみし」ですが、読む年頃、年代、その時の周囲の環境などそれぞれ異なり、また読む度、それにより受ける感銘が少しずつ変わるという、なんともまあ、大変趣(おもしろ)い作品です。平安の世は女人にはなんとも生きづらく、立ち回りの上手い男人の多いこと‥その影には薫の大将のような男人もいる。読む度に六条の御息所の執拗な怨念の不気味さに寒気が止まらず、また紫の上の晩年には胸が締め付けられるように痛み、六条院(光源氏)の情けないプライドと意地には言葉も出なくなります。この決断さえなかったら、と。優雅な世界の裏にある、どろどろとした愛。自らの行いの因果応報と言えよう、駆け引きと裏切りを晩年には若者に仕返されす六条院。後悔してももう遅く‥そこに紫の上は居らず‥。なんと儚きこと。子供・孫世代においても繰り返されるのは業とでもいうのでしょうか。哀れなり‥。また数年後に読む時にはどんなことを思うのか──生涯楽しめる作品です。ただ、見目似ている多すぎる人物たちに「これは誰?!」と毎回思うのです。
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