日常クライマックス
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日常クライマックス

倫敦巴里子

元耽美というのは時間の経過の美しい表現

ネタバレ
2024年4月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校時代に大恋愛の末駆け落ちした15年来のカップルに訪れた突然の別れの危機。そこから思い出される約束と二人の歩んだ15年という日常の時間を感じさせるお話。
ページ数や文字数が多いわけでもないのですが、とても読み応えのある1冊でした。お金持ちの息子御厨と天涯孤独で養子の日下、イケメン高校生二人が大恋愛の末駆け落ちをする耽美の世界から、15年という日常を経て現在の幸せの形へ。ゲイCP故の苦悩や双方の親との交流など、長い時間を一緒に過ごしてきたからこその変化と、変わらずにある想いが交錯する世界が見事に表現されていました。高校時代の初々しさと、現在の馴れ馴れしさ、耽美も元耽美もどちらも素敵な愛ある時間だということが伝わってきます。
色々な人の想いと自分の立ち位置を理解している御厨は、頭をお花畑にして公然と恋人への愛を語り、そんな彼からの愛を信じているからこそ身なりに手を抜きタバコを吸う日下。苦労もあっただろうけど、二人がお互いを大切にし、一生懸命生きてきたからこそ周りの人たちの理解が得られたのだろうと思います。最後までなかなかえち出来ないという展開すらも面白かったです。1冊を読み切った以上の満足感が得られる作品です。
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