狼と香辛料
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狼と香辛料

支倉凍砂/文倉十

行商人と美少女、彼女の故郷への道中記

ネタバレ
2024年4月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 導入部分、
特に主人公のロレンス(行商人)とホロ(少女)のやりとりは
腹芸なので地の文がないと理解が追いつかない人も少なくないと思う。
それさえ乗り越えたら、
推定13世紀~14世紀後半の主にバルド海沿岸諸国をモデルにしたと思しき(あくまでモデルであり私の推定なので厳密さを要求してはいけない)世界で、
ホロの故郷を目指す道中記が綴られている。

作中で経済を扱ってるという風評を聞くので敬遠したり身構える人も多いかもしれないが、モデルとなった時代と地域の商習慣に近い経済活動ー要は商売ー描写があるだけで特に難解な描写はなかったと個人的には思うしロレンスや他の登場人物が会話や地の文で説明があるので、恋愛がらみの腹芸ほど理解は難しくないと思う。
その辺も含めて
作中世界の常識を知る助けとして
ハンザ都市、北方十字軍、エストニアとラトビアの狼男信仰と魔女裁判、ドイツ騎士団、リトアニア大公国(リトアニア・ポーランド連合王国含む)などの先行研究の記述、あとタイトルの元ネタと思しき『金と香辛料』の行商人の描写やシャンパーニュ大市の記述部分は参考になると思う。
(事前に知らなくても問題ない、会話や地の文で説明はある)
他の作品では曖昧にされている、食っていくためには銭が必要ということが描かれて、銭を稼ぐ手段が主人公のロレンスは商業活動であるというだけの話だ。
(私は西洋史素人だし、毎年細部が変わる現在の税制度の方がややこしいいわw)

二人で助け合って問題を乗り越え
旅が進むにつれ
故郷までの距離と二人の距離が縮まる。
商売はわかる
恋愛は会話だけではわかりづらい、地の文読み返さないと私は理解しづらかった。
特に序盤はわけがわからんかったw
だからこそ会話部分前後の地の文は繰り返し読み返すことになると思う。
商売に関わる事件中心に読みたい人はその辺理解できてなくてもいいだろうが
恋愛を読みたい人は分かるまで繰り返し読んでください。
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