パーフェクトワールド
」のレビュー

パーフェクトワールド

有賀リエ

いい作品だった

ネタバレ
2024年4月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 他サイトから読んで、一気に全巻読んだ。

最初はつぐみが好きになれなくて、なんだかイライラしたけど(笑)、恋愛ってそういうものかなとは思った。

「障害を持つ人との恋愛、生活、困難を乗り越えてすごい、感動」などとは軽く言えないなと感じた。作品ではあるけれど、現実に同じような方々が世界にはいて、暮らしている。丁寧ではあったけれど、描かれていない、描ききれない困難や問題はあるだろう。

いっとき、車椅子生活を送ったことがある。そのときの気持ちは主人公には及ばないが、できたことができない悔しさや絶望感は今でも覚えている。樹やバスケ仲間の方々の背景には筆舌に尽くしがたいものもあるだろう。

晴人の結婚もそう。どんな夫婦にも家族にも大変さはあるだろ。ナナちゃんの家族は、つぐみの父親のようには未だ行かなかったけれど、未来には受け入れてくれるといいなと切に思った。

先日、ホームセンターで樹つぐみ家族のような家族をみかけた。お風呂洗いの柄つきスポンジを見ていて、「この長さなら俺も楽にできそうだな」など車椅子の夫と会話をしていて、お子さんが「私はこっちがいい〜」とか微笑ましかった。妻は夫の意見を聞き「じゃ、これにしよっか」と。極普通の夫婦や家族の会話だけど、そこに至るまでの経緯は計り知れない。
この作品を読んで殊に感じた。

圭吾楓夫婦の話は切なく泣けてきた。
いま、眼の前に大事な人がもういない。受け入れがたいだろう。

障害を持つ方との結婚、不妊治療、特別養子縁組、障害を持つもの同士の結婚、生活、義足、車椅子サポート、バリアフリー、本当に様々な問題や課題が描かれていて、でも自分たちで選択して、周囲の支えに感謝して、人生を送る姿。
学びが大きかった。

まぁ、長沢さんが嫉妬でつぐみにぶつけた言葉から歯車は一旦狂ったとは思うけど(笑)、あの時のつぐみには受け止められなかったから仕方ない。受け入れてくれる近くにいる人が優しくて、平和にしなかったのもわからなくはない。傍からみれば、色々巻き込んだなとも思うけど、人は自分の思うようにしたいものでもあるなぁ、とリアリティがあった。

多くの方々に、フィクションが希望となることを願う作品だった。
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