捨て猫たちのトーチカ
」のレビュー

捨て猫たちのトーチカ

木田さっつ

最適な救済

ネタバレ
2024年4月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ さっつ先生の作品はほぼほぼ追っているのですが、
その中でもこの作品のスピンオフ元の「オレを守ると誓ってよ」は、珍しく嫌な奴が出て来る作品で、
私のさっつコレクションの中では読み返す頻度は低いほうでした。
そのため、このスピンオフ作品が出ても、「うわっ、隼人(唯一の嫌な奴)がメインか!」と、しばらく購入をためらっていましたが、
やはりコレクターとしては買わずにはいられず。

買って良かった!
さっつ先生のあとがきに全てが集約されていました。

※※ 本当は作品を味わってから このあとがきを読んで浸って欲しいので、買って読んでくれー!!※※

「隼人にも救済を。でも犯した罪をなあなあにして幸せにする事は出来ない。これから先も不安を抱えながら生きていくけれど、一緒に背負ってくれる存在が出来たので、彼らなりの幸せを拾い集めながら生きていく」。
この文章も素晴らしすぎますが、本当にこの通りのことが きっちりと、自然に描かれていました。
読んで色んな感情がグルグルしていた私の頭の中も胸の中もストンとスッキリ整理されて、まさに「腑に落ちた」。最高の読後感です。

自業自得とはいえ全てを喪失して生気を失った目をしていた隼人が、佐波に「飼われ」たのを見て、あ~佐波に依存させられていくのか~、自分しか味方が居ないと摺り込んで軟禁状態にするなんてDV男の手法やんけ~~ と思っていたら、
隼人くんは良い感じに顔つきが優しくなっていくし、佐波さんも少しずつ扱いが優しくなっていくし、時間も経過してこのまま良い感じにまとまるのかと思ったタイミングで
隼人にひと山ありました。被害者(未遂だけど)の立場を経験し、自分の犯した罪の重さを痛感するシーンは、痛々しくもあり、でも きちんと禊をするという意味では大事な局面でした。

そしてラストで2人で心機一転、新しい生活を始めたところで、心の底から「良かったね、幸せになって」と思うことが出来ました。隼人に対してこんなにも穏やかな幸せを願うことが出来るとは。(そして黒髪隼人、すっごいカッコイイ!)

極めつけは描き下ろし。
何とも言えない、日常の中に愛が溢れていて、かつ不変のテーマとも言えるエピソードで、最高のエンディングでした。

「オレを守ると誓ってよ」も、「自分が安心出来る居場所」がテーマで共通してます。「捨て猫たちのトーチカ」まで読んで完結!って感じです!
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