きみと見た世界が、
」のレビュー

きみと見た世界が、

穴守ソウ

切ないとかで言い切れない割り切れない感情

2024年4月28日
人間は知らなかった感情を覚え、恋にいつの間にか貪欲になっていく。
彼は、予め想定(設定)された行動範囲の中でのことをしているに過ぎない。設定(歯止め)を超えるには追加オプションを許す為の都度の行動が要る仕掛け。ドライなのは(我に返るほど)、ソレがそう設計された物なのだから仕方ない、という訳か。
しかし主人公にとっては想像しなかったリアクションを経験する日々、それ自体がときめき製造装置。
悲しい究極の限界は、本作が短編故に突如到来。出逢いかたに既に仕込まれていた。
恋愛感情を知った喜びが主人公にもたらされたことを微笑ましいと思って読み終えるしかなかった。

本日、利用者間のコミュニティスペースであるシーモア島のスレッド内のご紹介からこちらを知って読みに来た。
丁度、別途島へのご投稿から、ロボットと人間との55年前の恋愛物漫画「ダニイル」(もりたじゅん先生)を読む予定にしていた為、本当にタイムリー。
題材的にはそれに渡瀬悠宇先生の「絶対彼氏」(未読了)への完読意欲もとても刺激された。

「きみと見た世界が、」のタイトルに付された読点がまたいい(作者別名義作品とされる漫画もタイトル末尾に読点を置いてる)。出逢う前と変わって、出逢ってからの主人公の世界、彼女が痛々しいのだが美しくなって、これは幸せなのか不幸といえるのか無限ループの哲学問答の種だろう。別の引きこもりの一種になったともいえ、残酷さ、無常観、ボーダーレスな恋愛、多様な思いを喚起させられた。
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