このレビューはネタバレを含みます▼
全294p/中盤にエロ有(主人公以外と薄く):ストーリー重視でややバッドエンド。
無法地帯の街「天国」にはとある子連れの殺し屋セツがいた。セツは殺人を繰り返すうちに二人の夫婦を殺める。そこには赤い服をきた男の子が残されていて「将来この子に自分を殺してもらおう」と思い、リーシアと名付けた上で、日々衣食住を共にし、襲いかかる害悪から身を呈して護っていた。
だがある日のこと。かつてセツを拾ったロマネという男が現れ、リーシアとセツの仲を精神的にも物理的にも引き裂いてしまう。ロマネは殺し屋セツを愛していた。セツのためなら、彼の苦い思い出が詰まったこの天国という街を跡形もなくしてやろうと思えた。リーシアを遠い地に送りこみ、セツを自身の故郷で囲いこんで、暗い過去を振り返らずに生きていきたかった。なのにセツは心を無くしていくばかり。それもそう、リーシアはセツにとっての希望だったのだ。
リーシアは一体何者か?:時は遡る。少年期、セツは母親に連れ出されて無法地帯「天国」へ棄てられた。母親から受けた暴行でたくさんの血を流し、気づけば脳は赤色だけが認識できなくなっている(水の色と見極めがつかない)。天国で出会った一人の男娼リーシア。彼はセツのただ一人の友人だった。だが、ある日リーシアが良かれと思ってセツの父親を殺害してしまい、怒りや悲しみが込み上げたセツは、親の仇として恩人リーシアを刺し殺してしまう。セツの初めての殺人は自分に良くしてくれた唯一の友人だったのだ。その瞬間から世界がぱっと灰色になり、赤色だけが、リーシアの血の色だけが、鮮明に見えるようになった。
時は過ぎる。セツは殺し屋として日々を単調に過ごし、とある夫婦を業務の一環として殺害してしまう。そこには赤い服の男児がいた。その子供をリーシアと名付けて、かつての恩人(リーシア)になぞらえて甲斐がいしく世話を焼き、害悪から身を呈して護った。それはまるでかつてのリーシアと自分だった。自分(セツ)が親の仇をうつために恩人(リーシア)を殺したように、この男児(シン)も親の仇として自分(セツ)を殺してしまうだろう、これがセツにとっての恩人リーシアへの贖罪であり、追い求めていた自身の最後だった。セツは子供の手を引きながらも、その子供自身ではなく、その子を通して、最後の最後まで恩人リーシアを見据えていたのだった。