魔女と猫
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魔女と猫

黒井よだか

傷だらけの猫がかわいいのである。

ネタバレ
2024年5月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 絵がよい。善良な魔女と十字架を背負う猫が互いに救済し、浄化してゆく物語。魔力供給の場面は特に、言葉にせずとも互いの心のうちが伝わるような切ない迫力がある。嫌われ者の須藤は、世界の隅っこで過去の贖罪のためだけにひっそりと生きていた。個人的にこの須藤のデザインがすごく好みで、かわいいわ〜とほこほこしながら読んでいた。常に笑っているように見える細められた目元から、臆病な人間の「ぼくは無害です、傷つけないでください」と訴えている気弱さが読み取れる。世の中はそんな個性などは無視しておれを支配しようとする、生まれたときからそうだった。悪意の束縛に抗う間にふと暴力に取り込まれてしまった自分と違い、寿一くんは正しく生きていた。この人を守りたい、自身が渇望していた愛情を他人に受け入れてもらうことで“生きていく”ことを決めた。面白かった。
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