ANIMAL X【新装版】
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ANIMAL X【新装版】

杉本亜未

心穏やかに読むことは不可能。

ネタバレ
2024年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ ダイナソーロイドの血族の少年「湊」とその血族の子供を産める身体に変えられてしまった気の弱い青年「裕司」との一途な愛の物語です。若い頃に2巻(で当時は区切りがついていた)までは読んでいて、大人になってから続いていたことを知り、でもなかなか穏やかじゃない展開なのを察して目を逸らしていたけど、ここにきて勇気を出して読んでみました。ほんともう裕司と湊が子供と幸せに生きられればそれでいいと願いつつ。とにかく裕司の過酷な運命が読んでいてつらくてつらくて。元々は人間の男性なのにダイナソーロイドの子供を産める両性具有となってしまったせいでつねに性的に意にそぐわない行為にさらされる危険と隣り合わせ。実際に目を背けたくなる行為が何度もあります。ダイナソーロイドの血族と人間では根本的に性や愛情などの考え方が違うんですよね。そこに対する裕司の葛藤がほんと痛ましい。義務として行為を受け入れなければいけないと思う一方で心は拒絶してしまう。その悩みも全て、港の側でずっと生きていきたいという、湊に対する愛からなんですよね。湊も最初の頃は人間の考え方とは相容れなかったけど、裕司を大切に想うようになってからどんどん大人になっていくんです。無鉄砲で子供っぽくて人間の常識とは程遠い湊が裕司を愛して守って自分たちの子供を育てていく中で、BL界のスパダリとまではいかなくても、ほんとかっこよく成長していくんです。人間と血族、共存できる世界を願う2人のぶれない愛情だけが心の拠り所としてなんとか読み進めていけます。単なるBL作品として読もうと思うと心が潰されるので気をつけてください。ですが、裕司が自分の意思で心も体も受け入れる相手は湊だけです。そこは安心してください。まぁでも、薬で意識朦朧としていたり無理やりだったりと、ほんとつらい行為は何度かあるのでそこはもう読んでいて悲しみでいっぱいです。でもそういう行為の時も裕司は湊のことしか考えてないんですよ、最初から最後まで湊にだけ一途なんです。私的に、お母さんのいない小さな子が裕司のおっぱいを吸うのが許せなくてもう片方のおっぱいを一緒になって吸う湊が好きでした。やっぱスパダリには程遠いけどそんな天真爛漫な年下の湊を裕司はかわいいと思っていて、だから他にたくさんいい男に言い寄られてもなびかなかったんだろうなー。つらいシーンも多いけどそれでもたくさんの人に読んで欲しい作品です!
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