リセット
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リセット

谷崎泉/奈良千春

ピッキング攻め

ネタバレ
2024年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品を読む前に作者様の別作品「その愛に終わりはあるか」を読了していて、その作品の攻めが、受けの部屋にピッキングで侵入するというエピソードがあり、本作でも攻めの倉橋が当たり前のようにピッキングしてて、そうか、先生の作品で受けと結ばれるためには、攻めはピッキングで不法侵入できなきゃならないんだなーとかくだらないことを考えてしまった。私は三角関係とか微妙な関係とか大好きなので、上巻から漂い始めていた三角の気配にわくわくしたのだけれど、途中まで高平と橘田が最終的にくっつくのかと思っていたら、下巻のカラー扉絵も橘田とピッキング君の二人で、あれ、相手は高平じゃないんか?と思っていたら、高平じゃなかった。これに関しては、高平の思いが後悔を背負ったゆえのものだったからということなら、相手は高平じゃなくてむしろ自然なのかなとも思えた。
過去の事件と現在の事件、複雑にからまりあい真相は何なのか?とドキドキしたし、ぐんぐん読めたのだが、最終的には事件はかなりあっさり解決するというか、事件の展開自体はしりすぼみに感じた。ただ、高平と橘田の関係に、恋愛感情とか変にからめることなく、傷を負ったもの同士が生きていくために支え合っている関係で、恋愛とは別の次元にいるっていうのはよかったかな。倉橋と橘田にしても、これからともに生きていくんだということは見えつつ、「愛してる~」とか言いあうキャッきゃうふふな感じに安易にならなかった点もよかったと思う。読み終わると上巻冒頭に戻りたくなって、改めて冒頭を読むとああ、なるほどそういうことかーな気分になった。あと何気に久が原とか新田とか、渋い地名がちらほら出てきて関東在住の自分としてはなんかうれしい。
初めて読んだ谷崎先生の作品の攻めが、とんでもない野郎で、お話自体はなかなかおもしろいのに、攻めの行動がどうにも腑に落ちなくて先生の他作品を読むことにためらいを感じていたのだが、シーモア島で紹介されていたこの「リセット」や、「ダークホースの罠」などの攻めは、無理やりつっこんだりすることなくそういう意味では安心して読めて、谷崎先生の作品に対する印象が随分変わったのはシーモア島の皆様のおかげである。作者様の他作品も読んでみたくなった。
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