ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス
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ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス

泰三子

警察官の苦しみ

ネタバレ
2024年5月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ DVやストーカーに対する法案は制定されていますが、数多くある通報案件から事件を未然に防ぐ難しさについて描かれています。現実はニュースで挙げられている通り「バリバリに正義感に燃えた警察官が事件をスパッと解決」とはいかず、限られた法律の中では、警察官が出来うる対応を重ねてきても限界があり、こぼれ発生してしまう事件があることを実感させられます。また、警察対応への世論、報道の在り方、被害者を取り囲むネットでの誹謗中傷についても触れられているので、色々考えさせられました。
医療従事者もそうなんですが、警察官は「~してはいけない」などの制約や「警察官はこうあるべきだ」という警察官像がある職業であり、その上加害者や被害者の関わり方にハッキリとした正解はないので、結果が報われずに理想と現実の差が大きくなってしまった時、何が正しかったのか自問自答しながら虚しさを感じ、燃え尽き症候群になりやすいという危うさがあると思います。
本章の方でも触れられていて宮原部長の言葉に共感した部分があったのですが‥人の死に携わる仕事をしている人は決められた勤務時間の中で悲しい出来事があっても、仕事は待ってくれないので休憩時間になればご飯を食べるし、考えることはあっても勤務が終われば普通の生活をして寝ると思います。でもそれって感覚が麻痺しちゃって実は普通の人ではないのかも‥と思います。
経験年数も関係してくると思いますが、普通でいたら神経が持たないほど事件は日々続くので、悲しみに引っ張られ過ぎないよう、警察官にも実は性格的な向き不向きがあるのではないかと思います。カナのように苦しみながらも被害者や被害者家族に同化する位寄り添い、真剣に向き合ってくれる警察官が世の中には絶対必要だと提起した一方で‥感受性が強すぎると苦しみも大きい。前向きに別の道も考えて良いんだいう現実もこの作品は伝えてくれているのだと思います。
山田が凄いし、何より横井係長が本当に素晴らしい役割を果たしていると思います。好きです。
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