栄光のストローク
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栄光のストローク

灘しげみ

泳法を変えたりして成長するスイマーの活躍

2024年5月19日
泳法は二度進化を遂げる。更に作品内では、ターンを新たに開発して、もうひとつの主人公の必勝技に。その時代は、身体の使い方の地味な工夫などの小手先の域を軽々超えて、何種類もの非現実的ターンを編み出すようなTVドラマがあったこともあり、、考えられない無茶なやり方で本作品も主人公が新しい手法に進んでいく。当時は、超人的な技術による、野球でいうところの魔球みたいのが多々。
そこがストーリー作り面で安易に感じられてならない。
主人公は中学生なのだが、切ない片想いなどよりも順調にして堅固な想い想われでほぼ安定。当時の中学生は現実はおませではなかったと思料、恋愛初期にその辺に悩まされ過ぎないこのストーリー、あくまで水泳選手の水泳人生がメインなのだ。もちろん、誰が誰を好き、といった要素は描かれる。しかし、あくまで、幾つかある主人公の集中力を揺さぶるエピソードの中で、恋愛感情によっても乱されたことはあります、といった程度。
新たな技術をものにするための特訓がまた当時スポ根あるあるの激しさ。荒唐無稽といってもいい。
資質、才能を見出されて、ハイレベルの環境で這い上がる迄は作者の他の作品と構造的に類似。
ライバルが仲間となったり、やり過ぎの策士が離脱していく。発端となる事件や背景の憎悪みたいなものも、昔の漫画では珍しくはないだろう。しかしそれもまた、新技同様リアリティが遠のいている。そこをお話だから楽しんでしまえば…難しさもある。
全3巻。201,203,205頁で、総計609頁。作品から、昭和48(1973)年週刊少コミ誌発表(6/17~12/23号)らしいが、これもやはり単行本化は遅くなって昭和54(1977)年初版と。本作品もモントリオール五輪に合わせた時期の物なのに、単行本化タイミングは合っていない。当時は漫画というものが読み捨てメインだったという残念な現象を如実に物語る。
ストーリーは勢いがあって、不幸な事故や人を陥れる策略や病になってしまったケースなど、いろいろな登場人物達が賑やかに出入りして盛り上げる。それにしても当時のアマチュア至上主義的な部分が罪作り。
13歳の主人公、更に身長は高くない設定、ターンや泳法のレベルアップなどは、彼女の弱点克服ツールと思って寛容に受けとめたとしても、ストーリーの波瀾万丈さが少しだけ作りすぎ感が目に余った。
しかし楽しんでしまえば、どうなっていくのかとの好奇心で導かれて楽しく読み終える。
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