逆転ラブ・スマッシュ
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逆転ラブ・スマッシュ

灘しげみ

パートナーに出会うテニス物とスキー物

2024年5月19日
結構楽に上手く行く話と、挫折や挑戦の恐怖を克服する話の2話構成。表題作136頁、「雪原の夜明け」50頁。
テニスを始めた動機が不純な主人公が、辛すぎない悲壮感の無い練習メニューで、テニス上級者の手で短期で安易にレベルアップ出来てしまう為、上手くいきすぎな話にリアリティを期待することは間違いだとわかる。特に主人公の言動に好感を持ちにくいシーンが冒頭続く。スポ根物にある厳しくて過酷な練習は無縁。明るく楽しく、恋もテニスの腕も望んで何でも手に入るかのおいしい目にあう。
「雪原の夜明け」は恐怖心を克服する話。こちらは事故でスキー競技から一度は離脱した男性主人公が、ある日知り合った女の子とのやりとりを通じて、お互いが怖がっていた物からそれぞれが向き合うことになるストーリー。発表の当時は題材や展開には新味があったのかもしれないが、既視感拭えぬ感じ。1980年2月開催のレークプラシッド五輪の出場がかかる代表選考の競技大会が描かれる。単行本化は同年だが、初版は7月1日とのこと、五輪後半年経っている。

直前読んだ「栄光のストローク」もだが、この「逆転のラブ・スマッシュ」の巻にも誤字散見。残念。

王子様幻想、大人の恋への憧れ、等を砕くストーリーは今やそこそこ世に出ていると思う。今どきのご時世ならばもっと男性はしたでに、丁重に女性を扱うだろう。
子どもっぽい独り善がりで序盤気が回らない欠点を見せ続ける主人公ではあるが、そんな、ただ恋に憧れるだけだった女の子が、いろいろなことを考えられるようになっていくのは、話としての収束感纏まり感から好ましい。作品名の意味の種明かしがあった後は、そうかダブル主人公だったのか、と思い返した。
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