ときめいて・パコ【新装版】
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ときめいて・パコ【新装版】

せがわ真子

宇宙人の話と浪人生の話。絵の可愛さが好み

2024年5月22日
全5巻。表題作851頁で、第5巻には「ロマンチックな火星人」50頁と「青い鳥おっかけて」50頁が同時収録。
【新装版】というだけあって、カラー巻頭頁だとかイラストレーションも収録されており、表紙の色味の方と本編の後に掲載の色味と異なるものも。恐らく印刷技術の発展で、原画に近い発色が可能になったのかと想像。
岩館真理子先生を思い出す、実に私好みの可愛らしい絵全開で、手抜き感ゼロ、且つ夢の中を見せているようなメルヘンチックさでラブリーな存在のキャラ達。悪者ポジションも悪意というよりは「小」憎らしさで毒が強くない。しかもストーリーもほんわかしていて、主人公は割と動いてはいるのだけれど見た目ちょこまかしていて、慌てようと怒ろうと可愛らしい。
表題作は宇宙人と幼馴染みとの三角(?)関係の話。ひとみ誌1982年2-8月号の何処か~1984年3月号掲載が初出らしい。フェニックスの場面が良かった。やりとりを省いて結果のみ匂わした2箇所、突如ゴロッとした感じがしたが消化させるしかなかった。
「ロマンチックな火星人」プリンセス誌1979年4月号、一樹クンのお嫁さんになることが夢の、主人公の彼との距離感の悩みなど。シャンソン歌手フランソワーズ・アルディさんの名前が、「アルティ」になってる箇所がある。主人公の心を乱す存在の正体不明さを描いているが、彼自身を主人公の目から見せるので、彼のことは行動で読み取ることに。
「青い鳥おっかけて」はプリンセス誌1983年11月号初出とのこと。浪人生のことを題材にするのは、少女漫画では「おしゃべり階段」(くらもちふさこ先生)くらいしか記憶になく、まして今や現実にも浪人生超激減時代、読んでいてとても新鮮だった。せがわ先生の大学時代に身の回りには多くおられたと想像。
その立場ならではの孤独感や焦りなども伝わってくるし、時間が無いと感じながらも手が回らない美容や日頃通過してるだけの場所をゆっくり味わう散歩など、主人公の日々が少し潤うのが、読み手の私も心和んだ。便利屋という存在の使われ方はなんとなく既視感あるも、関わり方の、漫画ならではの近さとか、少女漫画っぽい展開が当方の期待感をくすぐられて良かった。
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