去る者は日々に疎し
」のレビュー

去る者は日々に疎し

葉月京/折笠りょこ

切ないです

ネタバレ
2024年5月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 主人公の命は、とっても真面目で誠実な男性です。将来有望でスポーツ万能、成績優秀で非の打ち所ない高校生でしたが、高校生のときに突如、最愛の恋人、希望に先立たれてしまい、生きる気力も無いまま、希望の姉の紹介で仏壇屋の蓮華堂に就職します。しかし、同僚と打ち解けることもなく、ただ亡き恋人の面影を負いながら、淡々と仕事をこなし、無気力な日々を送っているときに、たまたま人気AV女優の北野未来と出会います。
死の匂いを感じ取る事ができる命は、未来が自死しようとしているところを寸でのタイミングで救います。実家に居場所がなく、最愛の祖母も亡くし、AV女優の仕事も嫌でたまらない未来は何度も自死を図りますが、命の亡き恋人の未来の突然死のことを聞いて再び生きる気力を取り戻して行きます。
未来もまた死者の霊と会話する事ができる能力を持っており、命と未来は、様々な人達の自死を救います。
下心が全く無く、純粋に自分に親切にしてくれる命を未来は徐々に好きになっていきます。AV女優を辞め、命の隣に立つに相応しい女性になりたいと所属事務所のオーナーの勝子に申し出る未来。しかし、未来を待ち受けていたのは苛酷な運命で、契約破棄の慰謝料5000万円を要求されてしまいます。未来を救うために自分の気持ちを殺して、同じ職場の蓮華堂の事務職の奈美との結婚と奈美の実家が経営する病院の跡取りになる事を条件に5000万円を用意します未来を自由の身にしてあげた命。けれど、命の心には、もう既に未来が住み着いており……

命と未来の翻弄されるような運命がとても切ないです。命の婚約者の奈美ちゃんも、とても優しい素敵な女性で幸せになって欲しいと思うものの、やっぱり命には未来と結ばれて欲しいです。自分の気持ちを押し殺し、未来との幸せな夢や将来を犠牲にしてまで、未来に捧げた命の気持ち。結ばれなくてもいいから、愛する人を救いたいという命の覚悟と行動。これぞ、究極の愛ではないかと思います。
どうか、奈美ちゃんが命の真意を汲み取って、命と未来が幸せになれるような展開を願うばかりです。
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