環と周
」のレビュー

環と周

よしながふみ

年齢差まで考えると…涙

ネタバレ
2024年5月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 環が周を見つける物語。最後まで読むと、輪廻転生を感じさせる構成になっています。


江戸時代の環と周は、悲恋の末、周の死後すぐに環もこの世を去ったのでしょう(共に死んだ?)。次の世の明治の女学校で出会う環と周は同い年です。

そうやって追いかけると、登場人物の年齢差と前世の死ぬときの時の差が見事にあてはまり、自然に見えるお話の運びの中に、縁といいますか輪廻転生とおもわれる繋がりがしっかりあって、構成の見事さにも脱帽しました。

女学校で同い年で出会った環と周は、先に環が亡くなります。
その次の世の戦時中の上官と部下の環と周は、年齢差ははっきりとわからないものの、おそらく環のほうが年上。
喫茶店を営んだ周はけっこう長生きできたのか、70年代のアパートの隣人として登場する周はまだ幼児。
対して、環は中年にさしかかる女性なのですよね……。戦後の上官だった環、周とその妻の元を去った後、あまり長生きしなかったのかなあ。切ない。

70年代の環と周は、隣人さんで死ぬときも別々の病院。悲しい……。
だけど、この世を去る時期がそうかわらなかったから、現代の環と周は同じ大学の同じゼミ(おそらく同い年)で出会えたわけで。

切ないけれど、悲しいけれど、また会える喜びがあって……。

綿密に組まれた出会いと別れの物語が、現代の環と周の物語では、とうとう共に生きる道を歩んでいます。
今度こそ死に際まで……どちらかがどちらかを見送るときまで共に添い遂げるんだろうな……と想像します。

個々で読んでも心が温まるお話です。
また、一冊を通し、各話の繋がりを見つけながら読むと、江戸から令和までの時代は変われども人が生きて、泣き笑いすることの愛しさがつたわってきます。
いいねしたユーザ19人
レビューをシェアしよう!