グレープフルーツムーン
」のレビュー

グレープフルーツムーン

芹澤知

好きという気持ちを大切にする話

ネタバレ
2024年5月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 腕のよいパティシェとケーキ屋のバイト男子大学生の、それぞれの成長に関わってきたケーキという存在への温かい気持ちや、商品開発や販売の工夫に勤しむ姿が描かれる。二人のBL関係にはどぎつい場面無し。
お店のある商店街入口の雰囲気、店内の感じ、ケーキ何種類もの存在感、夜景などとても丁寧。回りの人物達が皆、醜い対立を見せない。

二人それぞれの転機といおうか、話の転回部以降のところが少し如何にも試練到来なのが、少々気になった。また、香月のアイディアはもっと固めた先を見てみないと困難が多いままなので、読んでいて不安も感じた。
二階堂の立ち位置が便利にされているのも気になるといえば気になる。
bonusの幾つかに委ねたストーリー部分、実は全体感の中では比重は結構結果高いかと思うのに、bonus扱いなのは解せない。

その道では知名度のある存在が表から姿を消す、その背景や、才能故に結局隠れきれないところなど、そして自覚的にまた意欲を戻し始めるきっかけなど、折角の要素を地味なビジュアルに済ませているが、ドラマティックなものをもっと出せたのではないかと思うと、なんだか惜しい気がしてならない。
バイクの場面に華を譲ったか? しかしパティシェの話なのだから、本業の場面には幾らでも華を押し出しても散漫にはならなかったと思う。彼等二人がケーキというその共通言語があるのに、それをもっと個別ではないシーンでも見たかった気はする。
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