水の春
」のレビュー

水の春

黒沢要

静かな日常。そーっと見つめる感じで終わる

2024年5月30日
全然悪くない。寧ろ読後感がいい。続けてBL読んできてこれもレビュー書いとこうと思った。
序盤のほうに、え?と思わせる思わせぶりシーンがあって警戒した。しかし穏やかで、それでいて少しの後ろめたさを関係性に負わせている展開の中では、主人公独特の翻弄の仕方であると認識。
告白してきた相手を見つめることにより、いつの間にか引き込まれていくのは、この話に付き合わされて読み進める読み手も同じ。その誘い込み方が、小さなエピソードのサラリとした存在感で徐々にはまる様になってる。ピアノのシーンの引き込まれ方など、私も2人の世界に立ち会ったようだった。あとがきによれば、下敷きにしたリストのそのピアノ曲に存在しない和音を描きたくないから譜面を確認、とある。そのこだわりはくらもちふさこ先生を連想した。
虚構の世界にあるリアリティ、まさしく、主人公が震えて聴いたものはそこにあったのだと思わせる、作家の価値観に共感する。
シーモア(島)という利用者コミュニティに、本作の紹介があったことに感謝。
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