このレビューはネタバレを含みます▼
日没と共に性別が変わる呪いにかかっている主人公伊織。呪いによる体質がバレないよう他人と関わらずに生きてきた。家族や親族は全て知っているけれど、身内以外でありのままの自分を受け入れ味方でいてくれる人を求める気持ちもある。そういう土台があって、初めて秘密を共有できた綾瀬に惹かれ、秘密を打ち明けなくても性別関係なく自分を受け入れ愛してくれる森にも惹かれ、どっちかなんて選べない!!ってなる気持ちは理解できます。綾瀬に惹かれて告白もしたけれど、「男の伊織は無理」と拒まれ関係を最初からやり直すことになり、一方で森とは過去にも色々あった分、お互いのことを良く知っているし、性別関係なくお互い惹かれていることが分かってきて、森と付き合いたいと思うようになるのも理解できます。ずっと社会的には男で生きてきて、初めて女の時に人との関りができた時、女性の身体に引っ張られるように感情が揺れて戸惑うところは良かった。でも、見たかったのは性別を超えたところにある伊織自身の本質が何を求めているのかでした。それを対照的な2人の人間のどちらを人生の伴侶として選ぶのかで示してほしかったなと思います。私は綾瀬という人間も魅力的だと思ったけれど、全体として見ると、どうしても彼を選ぶという流れは違和感がありました。後から「性別関係なく好きだ」と伊織に伝えているけれど、その心情に至る経緯に説得力がなかった。
2つのエンドを作るためだろうとは思いますが、本編は話の筋や主人公の心情がグニャグニャで読みにくかったです。でも森エンドだけで読むと、大学卒業まで性別の固定を延ばしたのも、パートナーとの子供が欲しいから女性になることを選んだのも納得できるし、当て馬として見るなら綾瀬はこれ以上ないうってつけのキャラだし、さらに言えば、伊織が何を求めていたのかがこのラストで明白になったおかげで、分かりづらかった本編の筋や心情まで見えてきて、スッキリした気持ちで読み終えることができました。逆に綾瀬エンドは違和感だらけで無理矢理感が拭えませんでした。私は綾瀬も好きだから、こっちのエンドももう少し何とかならなかったのかなと思いましたが、途中から分岐するという形では難しいのかもしれません。そんな訳で評価は、森エンドなら☆5、綾瀬エンドなら☆3で、間を取って☆4にしました。