天女恋詩
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天女恋詩

水樹和佳子

初期4作品。敢えて毛色違いで広い領域見せ

2024年6月10日
いずれも70年代発表だが、僅か16頁の同時収録「冬ふうりん」に見られる日常のひとこま描写から、表題作の成り代わり物、水樹先生お得意のファンタジー入ってる「幻想銀河へ」、そして今でも漫画にもたまに扱われる心理学的素材のロマンチックコメディまで、実に多彩な初期作品集。「天女恋詩」61頁掲載誌りぼんデラックス(以下DX)1977年夏号。「幻想銀河へ」65頁りぼんDX1979年秋号。「クイニーと博士とetc.」50頁りぼんDX1977年秋号。「冬ふうりん」16頁りぼん1975年12月号。こちら初単行本化は1981年11月。
当時は普通に使われていた「ナウ」の用法が時代感。70/196 の虚空感の語は、そのときは違和感を持ちつつも作者独特の言葉表現かもと素通りしたが、116/196の虚空間に至って、いずれも虚空間にしたかったのでは?と思う。ともあれ「幻想銀河へ」は水樹先生の作風を感じる。「クイニーと~」はそれ使うのか、と感じた。70年代からの科学者が読む近未来への展望のテーマ羅列は、2024年の今見てなかなかだと感心してしまった。主人公の見抜きの力、恐るべし。 いずれの作品も随所に萩尾望都先生の影響を感じざるを得ない。相当慕ったのか、心酔に近いものを感じた。
「冬ふうりん」はこの僅かな頁で描かれた内容の豊富さに、水樹先生の技量が詰まっている。
昔の少女漫画は今ほどハピエンが多くなかったイメージがあるのだが、それを裏付けるかのように、ストーリーかキャラ造形の何処かに影がある。人が亡くなる、或いは過去に亡くなった、といった状況の織り込み。ただ、それを乗り越える望みもまた描かれる。そのため、人はそれぞれいろいろあるけれど、でも進もう、という感じ、かな。
水樹先生にはこういう作品群もあるんですよ、という詰め合わせ感覚で楽しませてもらった。
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