天堂家物語
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天堂家物語

斎藤けん

お勧めは特装版!

2024年6月21日
頻繁に目にするものの、作画が好みではなく避けていた本作。無料分を試しに読んでみて、ファンが多いのも納得で、もっと早く読めば良かった、と後悔するほど面白かった。少女漫画にしては重厚で、恋と秀逸なミステリーが同時に楽しめる。舞台は閉鎖的で陰鬱な気配漂う天堂家、その中で次々におきる凄惨な事件と、対比するように美しく描かれる二人のラブストーリー。
良作の例に漏れずキャラクターが魅力的で、特に振り切った俺様気質の雅人は、独特なタッチで描かれる眼光鋭い容貌がぴったり。ニヤリと笑ったり、「ハッ」の笑い声、らん対する天邪鬼な愛情表現がだんだん癖になる。一方のらんも、初期の野生児然とした姿もヒロインとしては異色で面白いけれど、雅人への恋心を自覚してからは回を追う毎に女性らしくなり、その過程の描かれ方が見事。初恋に戸惑いつつも、自身を省みず雅人を守ろうとする姿は健気で可愛く、応援したくなる。そして天の邪鬼な雅人と純粋培養の野生児らんの恋は拗れに拗れ、もどかしい。長い両片思いの末、遂に、、のシーンは万感の思い。
作中には、金平糖のエピソードや布越しのキス、旅館での逢瀬など、少し考えただけでも思い浮かぶ名シーンがいくつもあり、そういった作品との出会いはとても貴重だと思う。
また、漫画も価格帯が徐々に上がる中、抑えた価格設定なのも良心的でポイントが高い。今後も天堂家の謎、二人の恋の行方、結末まで必ず見届けたい。
補足で、10巻と13巻は特装版でも発売されていることを知らず結果的に両方購入したが、本作が好きなら特装版の方がお勧め。特に13巻特装板はファン必見。
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