何故その人を好きだと思うのか。

描いてるのは男同士の恋愛だけど、コテコテのBL漫画とは違って、良い意味で生々しさがあります。
聖の女装がひと癖ある話のように見せてますが、聖にとっては鎧のようなもの。結局行為をするときは丸裸なので、それを全て受け入れてくれないとその先はない。自分に欲情するかどうかが、悲しくなるほど切実だというのが痛覚のように伝わってきます。
ただ一緒にいられたらいいなんてきれいごとは描かれてません。
ラストでやっと肩の力を抜いて互いを見られたのが、聖が男として幸雄の前に姿を見せたタイミングだったのがまた良いです。
幸雄は頼りないけど、嫌いにはなれないタイプの優男。聖は容姿に恵まれながらも、マイノリティに生まれた事でネガティブな思考と付き合わないといけなくなった子。
村上が毎回良いところで幸雄の視野を広げる言葉をかけてくれます。自称モテ男なので自己肯定感も高く、確かにイイ男。
男同士だから難しいこと、男女でも同じこと、男か女かという問題でなく、純粋に幸雄が聖を好きなのだという真実が残り、気持ちの良い読後感を生んでいます。
あと台詞に使われてたので言及するけど、女々しいとか男らしいって形容するのに性別が使われてるやつホントに嫌！