愛人を囲う冷徹な伯爵との典型的な政略結婚、そして嫌われからの溺愛、その結末。【シーモア限定特典SS付】
宝楓カチカ/色素
このレビューはネタバレを含みます▼
早く先が読みたい!と思う作品は多々あれど、先に進むのが怖いと思った作品は初めてでした。
タイトルだけ見てラノベ定番の「冷たくしていた結婚相手に絆されちゃったやつね、はい、大好物ー」と購入、ま、ちょっと1巻の表紙が不穏だけど、2巻は可愛い女の子だしと読み始めたら、思いの他早い段階で旦那様完堕ち。2巻もあるのに?まさかこの先ずっと2人のイチャイチャが続くのか…と不安になったら、その不安は真逆の方向に表れました。
レナンドの過去が初めて暴かれたときには手先が冷えて震えてしまい、恐ろしくて先を読むのをためらうほどでした。残虐シーンが苦手な方は絶対にお止めください。トラウマレベルです。私は夢に見てしまい、本気で落ち込みました。
残酷な描写に意識を捕らわれがちになりますが、お話としては非常に練り上げられたものだと思います。
孤独で冷酷無慈悲、他者など虫ほどにも思っていたかった男が自分の命を差し出しても構わないほど愛した妻を喪い、発狂しながらも、己が仕出かした過去を悔やみ深い懺悔の日々を送る一方、妹のように可愛がっていた娘から向けられた牙に苛立ちながら過ごしていた男。
2人は地獄へ堕ちるも、方や永遠に救われない地獄、方や最期に愛妻に見送られ幸せな思い出と共に地獄へ。
レナンドのしてきたことを考えれば、到底好きになれるキャラではないのに、セシリアを想うレナンドが憐れ過ぎて心底嫌いになれなかったので、レナンドも他者を思いやれる人間であったと認めたセシリアが、最後はレナンドを赦し、あまつさえ微かでも愛情さえ持ってくれていたことが本当に、救いでした。
いいね