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渡辺ペコ

エゴにまみれた人物描写が巧み

2024年7月7日
最後までだれずに一気に読ませるストーリー構成と登場人物の緻密な心情の描き方に星5つ評価ですが、全体のレビュー評価が低めなのはこの赤裸々なキャラクター達のエゴにまみれた行動と心理描写に拒否反応を示している読者も多いのかなと想像。決してペラペラの、内容の薄い大量生産型の恋愛漫画ではないのですが...いちこが礼に対して、おとやが美月に対してそれぞれ感情を反芻している場面でもありましたが、結局人は自分優先で他者は二の次。自分は相手に愛情を持っていると思っていても、自分にとって都合がよい状況だからこそ感じるものかもしれない。相手から受け取るメリットが自分が与えるものより目減りしたら、自分の存在価値が軽んじられたと傷つく。最初は何もかも新鮮で恋愛ドーパミン出まくりでも、時間の経過とともに感動と相手への感謝は薄れていく。決定的に相手を傷つけてしまったら前の状態まで復元することはほぼ不可能。他人と末長く双方心地よいと感じる関係を構築維持していくためには、これらのことを肝に銘じて日々過ごさなければ...と実感しました。基本的に漫画は現実では体験できないファンタジーの世界を楽しみたいので、ドロドロしたネガティブな要素を排除したジャンルしか読まないようにしてますが、この作品は辛く悲しい感情が生まれた時、どのように自分と向き合ったらよいのかを再確認する意味でも読んでよかったです。
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