このレビューはネタバレを含みます▼
身代わり婚の王道を行くようなストーリーで、幸せな気持ちでエンディングを迎えられます。
お決まりの悪役.叔父夫婦にはちゃんと相応のラストが与えられ、モヤモヤ感が残らない。
この作品の異色は、ヒロインに身代わりをさせた相手、叔父夫婦の娘が、意外にも悪役ではないという点。勝手に書生と駆け落ちして、女中扱いされている従姉妹に見合い相手を押しつけた、というお決まりの展開から、さぞ嫌な女でヒロインをいじめたりこきつかって来たのだろうと思いきや。
実は従姉妹の存在こそが、ヒロインの辛い境遇を支えて来たのだと、ヒロインの口から明かされるのです。
それでも最初は、それは純真なヒロインの思い込みで、騙されてたんじゃ?と疑って読んでましたが、本当に2人は強い絆があった。そして美弥子には美弥子なりの深い考えがあってのことだったと、最後に分かります。いやこれは凄い。面白いです。
旦那さんの話をまだしてませんでした。これまた、見合いから始まる恋、という展開で、無愛想な旦那ゆえに、なかなか進展しないのも楽しい。うぶな新妻の為に、初夜は最後までせず我慢して、少しずつ、、という展開も、TLならではのドキドキ感が楽しめます。そして、ヒロインの出生と婚姻に関する秘密が明かされる過程で、2人は互いに悲嘆し悩み、破局しかけますが、すべてを理解した後はラブラブに。
プロローグで語られるエピソード、ヒロインが幼い頃の恐怖の記憶が、警官絡みだったこと。これもちゃんとラストに意外な展開で回収されます。この見合いには、実はもう一つの意味があったのでした。なかなか深い。その意味でも、アレはどうなったんだろ?みたいなモヤモヤが一つも残らない、よく練られたステキな作品です。
ただ一つ、この内容だと、ボリュームがちょっと足りなかった感があります。伏線や背景、ストーリーがしっかりとしているだけに、もう少し丁寧に2人の葛藤や育って行く愛情を追って行けたら最高だったですね。それは今後の作品に期待したいです。