花の都に咲く恋は【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
95
ふう
さん
(女性/60代~)
総レビュー数:155件
このレビューはネタバレを含みます▼
時は江戸中期の京都。祇園祭で賑わう中同心の隼之助は、有ろうことか、同心の身であるにもかかわらず、スリの被害に遭って仕舞います。財布は兎も角、亡き妻の形見の簪も。どうにか捜し当てた張本人は嵐と言う美しい若者。己の私利私欲の盗みではなく孤児を養う故の罪でした。それを多目にみて、孤児達の奉公先まで捜す隼の人の良さ。月代の清潔さも感じさせて、身だしなみをきちんと出来る好印象は隼の真面目な生き方さえにおわせます。何時しか静かにゆっくりと寄り添っていく二人の心。身体を合わせる迄の甘い躊躇いや、交合中の優しい労りと、互いが互いを尊重し愛しているのが手に取るように分かります。
小さな幸せを大きな喜びと捉えられる二人の感覚。つましくも心は充実。隣り近所や他者を思い遣る心根。派手さは無いけれどこう言うのが、二人に限らず、昔の大半の日本人の生き様だったのかと。この作品、シリーズ化にならないかなぁ~。髪結い新三になっては困りますが、嵐が手に職をつけお金を貯めて二人でお伊勢参りも良いかも。
時代物漫画って華美に走り過ぎて絵柄がクドく感じるのが多かったですが、この作品はさっぱりしてコマ割も見やすい。更に、別嬪、首ったけ、まぐわいなど、すでに遠のいてしまった古い日本語を目に出来、楽しかった。何だか、お気に入りの作者様になる予感。こういう出会いってワクワクしますよね。
いいね