天涯の佳人
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天涯の佳人

夜光花

試し読みの数ページが面白くて気になった

ネタバレ
2024年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 超有名な三味線奏者の孫が初めて参加する大会。演奏が始まると度肝を抜かれる聴衆。その大会で弦が切れた。その時に、あれ、どうしたんだろう…と演奏を辞めてしまった受け。もうこの導入部分からして面白いんですよ!その後、音信不通の父を探すことになったり、この辺はすごい時代が感じられ、もはやこの設定が時代劇じゃん…て感じなんですけど、面白い!!プロになりたいとかじゃないのに、一日中三味線を引いて、もっと高みへと向かう受け。こういう自分との闘いみたいなのが、本当なんだろうと思います。でも、それを周りで見てる人が素通りできない気持ちもよくわかる。特に三味線に纏わる受けの思想については、もはやついていけねー!くらいの孤高の境地にあると思います。それでも、受けのそばでフォローし続けた浅井さんスゴイよ。ちょっと世間を知らない感じの受け、土手で三味線引いてたら石投げられたり、同郷の先輩からは自分の知らないところで燃え盛るような憎悪を向けられていたり、しかも浅井さんは女の人と良い感じで、自分のことはもうどうでもいいの?と、この辺のツラいことどんぶりで山盛り出される感じ、怒涛です。受けの鈍感さと繊細さが表裏一体となって、生きづらさを形成している。これそんなに分厚い本じゃないと思うんですが、中身は重厚です。本筋たるストーリーがこんなに面白く書ける作家さんそういないと断言します。受けが攻めと幸せになってくれて、本当に嬉しい。それが、演奏にも影響を与えて、良い循環が生まれたら良いなと思う。
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