兄の元カレとする恋は【電子単行本版/限定特典まんが付き】
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兄の元カレとする恋は【電子単行本版/限定特典まんが付き】

斧原ヨーコ

唐突さを感じた人は二周目がより楽しめます

ネタバレ
2024年8月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ まず、帯の「チャラ男リーマン×ウブで一途な大学生の救済ラブ」は一旦忘れて読んでください。チャラ男とは別種だし、ウブはともかく一途さの強調が必要な物語でもないです。 最初、
作中の「愛してる」が唐突に感じましたが、二周目で藤森(攻)にとって英里くん(受)がこれまでのワンナイト相手とは違う存在、恋に落ちてく様に気が付きました。また、英里くん(受)が言ってたように、藤森は大げさな言葉を使いがちで言葉の軽いように見えましたが、話の終わる頃には、それが藤森にとっては大げさでもなんでもないとても自然で当たり前な言葉だった、と気付かされます。
藤森は真の意味で自己肯定感の高い男です。そして悩んで落ち込むことがあっても、傷付くことがあっても、決して闇落ちはしない、誰かを恨んだり傷付けようとはしない、そんな光属性の男です。そしてそんな光属性っぷりが、時にコミカル、時に爽やかで、ともすれば暗くなりがちなテーマにも関わらず、スッと読み進められます。
若いように見えて、様々な経験からしっかり大人になってしまってる藤森に対し、英里くんは瑞々しい程に青く若いです。高校生ほど幼くない、けれど社会人ほどスレてない。そんな大学生らしい、とても愛されて育ったのだろうと思える素直な青さです。そして、若さだけでは説明できない不思議な色っぽさがあります。それ拝めただけで、充分読む価値ありました(笑)

そして最後に。正直、直輝には「子供が欲しいなら付き合うな」と思っています。美味しいとこ取りで、この野郎💢とも思っています。ただ、それはそれとして直輝は、生涯で一番愛したのは藤森だったんだろうな、とも思っています。自分の不誠実さ非道さがわかってるから、そのケジメとして、完全に連絡を絶ち、夢でさえ愛してるとは言わなかったんだと気づきました。きっとどうしようもなく藤森に惹かれ付き合ってしまったし、子供を諦めるかどうかも悩んだんだろうなと。そう考えると、元カノへの過剰な程の愛情表現は、恋愛的にも愛そうと必死だった結果で、相手を騙してる事への贖罪でもあったのだろうと思え、藤森といた頃のマメじゃない直輝は自然体で、思い合い幸せだったんだろうと感じています。 重い内容のハズなのに、とても爽やかで軽やかで、だけどいろんな思いがしっかり凝縮されてる、まるで映画みたいな一冊でした。
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