ぼくの狂人くん【コミックス版】
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ぼくの狂人くん【コミックス版】

いとだ旬太

かなり攻めている

ネタバレ
2024年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ こういった類のストーリーにおける強引な(無難な)ハッピーエンドを好まないので、結末のメリバ含めて大好きでした。1話1話が濃厚で、読み応えもあります。前半は割としっかり行為シーンがあるものの、あくまでBLとしてのスパイスでしかなく、後半は心情や展開をしっかり描いてくれていました。後半は、前半の行為をすっかり忘れてブロマンス枠で読んでいましたし、そう思えるほど物語がよくできていました。ファッションアングラ枠よりもよほどリアリティがあります。サプリの件については脱法でそうはならないでしょ…と思いましたが、相当ネタが悪い上系の混ざり物なのでしょうか。ただ、この内容は一般人に受け入れられるのは厳しそうな気がします。攻めの手に入れてからの脱力感や、受けの「本当に不幸な人間ほど不幸だと思っていない」部分の描写は、リアリティが強いせいで普通に生きている人にはその感覚が掴めなさそうだな、と感じました。攻めは手に入れたのになんでそんなヘマをするのか、受けは何故こんな状況なのに馬鹿っぽく明るいのか。そう言った疑問を浮かべそうです。それは手に入れたものがない人や、本当に不幸な人が持つ思考や言動なので、やはりこれを万人に理解させることは難しいなと感じました。実際、そんな作品は見たことがありません。また、本当にその感覚を体験した人の作品にしかこの手のリアリティは生み出さないと、今まで漫画、アニメ、小説、映画、舞台作品を通して感じたので、この作者の方も何かしら体験もしくは身近にあったのではないかと考えさせられました。特に離脱症状の部分で発する受けの言動は知らないとなかなか出てこないものです。
個人的には受けの不幸を不幸と知らずに生きていて、不幸と気付いた瞬間の攻めの辛さ(脱力感、絶望感)がグッときました。全体的にあっさり軽めで描くせいで読みやすいし、柔らかい絵柄で鬱々としないところもとても好きでした。
結末を見ると、彼らにとってこれは自分の人生で起こった出来事でしかない。そう言われているような、いい意味で突き放されたような物語でした。
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