拝啓「氷の騎士とはずれ姫」だったわたしたちへ
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拝啓「氷の騎士とはずれ姫」だったわたしたちへ

八色鈴/ダンミル

悲劇設定盛り込みすぎで、ひいてしまった

ネタバレ
2024年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ ノベル版とは細部がかなり違っていますがWeb版では完結。冒頭でヒーローを思いっきり下げて、実は超不器用で無神経だっただけで、深くヒロインを愛していた、という強引な設定。
 ヒロインの結婚生活を悲劇的にするためか酷い描かれ方です。
 対象的に、転生後のヒロインの明るく行動的なこと。16歳の娘が身分詐称して領主の館に乗り込み、侮辱されたら領主様を平手打ち!性格変わりすぎ!
 作者が読者を泣かせようと悲劇設定を盛りまくって、転生後の話しが浮いてしまった気がします。

 私は、ラストが気になってWeb版を一気読みしました。ラストでアノ事件の黒幕が判明。ミステリーじゃないんだから、ここまでつくりこむのは、、、興醒めして逆効果。爽快感を感じませんでした。黒幕の2名は最後まで善人設定だった方が不快感は少なかったと思います。
 また、魔法のない世界観なのにヒロインの転生に気付く人が複数出現するのも違和感。
 転生物語の成否は、転生前後の人物の描き方にかかっていると思います。くどいですが、DV夫に抵抗の姿勢をとれなかった人物が、平手打ちはありえない!
 国王の外孫の姫君に年若い平民の娘が行儀作法の家庭教師になるのも無理設定。イーサンが〝オスカーは愛人を娘の家庭教師にしている〟と推測したのは当然です。身分社会の呼称を細かく設定しているのに、物語世界そのものが成り立っていません。

 設定無視のメロドラマに感情移入できれば泣けるかもしれません。
 ラストが気になる人はWeb版を読まれたらいいと思います。そのラストには賛否両論あると思います。転生前のヒロインに感情移入すればするほど、すっきりしたハッピーエンドにはなり得ない作品です。
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