おかえりオーレオール
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おかえりオーレオール

高津

単純でいて難しい

ネタバレ
2024年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品のオーレオールとは何か。先生の解説がない言葉や存在はすごく気になりますね。考察は苦手ですが読んでいる時も読んだ後も考えています。
お話の途中から出てくる蝶も気になる存在です。どうやらカズの心象風景のようですが、それがバラバラになるシーンがとても印象的で、私はヘッセの作品が重なりました。国語で習って以来なのでタイトルが思い出せませんでしたが(調べたら『少年の日の思い出』でした)、あちらでも蛾(の標本)を壊してしまうシーンがとても印象的でした。物語が現在から始まり過去を振り返る描かれ方も似ているところ。
ただ違うのはこの2人には2人一緒の今があるということ。過去の振り返りの後、冒頭の現在に戻るのです。モトは《エーミール》ではなくカズも《僕》ではありませんでした。そういう人間だと拒絶するのではなく戸惑いながらも離れなかったモトと、諦めるその日まで苦しい気持ちを持ち続けようとしたカズ、2人が苦い思い出で終わらせなかった先にある今。物語の終わりのささやかな月光はそんな2人を導く存在なのかな。離れかけた2人の関係にまた光がさしたからおかえりなのかな。何とも力任せなこじつけですが私はそう思うことにしました。
どこにでもいる男の子たちの当人たちにとってはありふれていない恋愛にとても胸が打たれました。
★200ページ。
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