召し上がれ愛を
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召し上がれ愛を

木下けい子

同級生の存在が料理の隠し味になってる

2024年9月6日
笹川の人物像みたいなもの(堅物さ・真面目さ・素直さ)が、ちょっと浮世離れしているような気がしないでもないけれど、似たような感じの人は実際にいる気がします。
そして、当て馬ではないけど、何とも言えない重要ポジションを担う笹川の同級生の存在が、ストーリーの複雑かつ不可欠な味わいを出すのに貢献していたと思います。この同級生のような掴み所のない人…私は、学生時代を思い返してみると何人かいました。それこそ作中の笹川みたいに名前も覚えていませんが、「友達になろうという積極性も持続性もないのに、時々近づいてくる人」です。その人は、作中の同級生と違って陰口を言うタイプでもなかったので、単に「広く浅くの人間関係を求めてた」のかなーと思いますが、そういうちょっとした違和感みたいなエピソードをストーリーに落とし込む、先生の技量とか感性って素晴らしいなと感じました。
俊成と出会うことで、カチコチに凝り固まったようだった過去の苦い思い出も現在の生き辛さもマイルドになったようで、ほっとするお話しでした。
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