血を這う亡国の王女【分冊版】
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血を這う亡国の王女【分冊版】

我妻 幸

ファンタジーではない

ネタバレ
2024年9月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私の思うファンタジーは絵空事であっても夢のあるフワフワとしたもの。まだ8冊?巻?しか読んでないがこの作品はそういうところは一点もない。表紙の透明感のある絵は却って題名と相まって奥知れぬ怖さを感じる。実際読み始めると血生臭いし性暴力だし何故ファンタジーと括ったのか首を捻る。これは史実であり現実だ。いつの時代も戦争と女性への性暴力性搾取は切り離せない。ついこの間のイスラエルへの奇襲でも大規模に行われた。同様にパレスチナの女性へも過去の戦争のなかではあっただろう。けっして絵空事ではない。そんな現実を突きつけてくるのがこの作品だ。ただこのなかの主人公達はその現実に踏み潰されてはいない。泣くだけ無力を嘆くだけの女達ではなかった。周到に計画をたて決起する力があった。どこかで失敗する、結果これまでよりも残虐な扱いを受ける、そういう疑念が頭から離れず怖くて、先へ読み進めるのに躊躇われる。彼女らがこの束縛をとき自由になることがここでのファンタジー、絵空事なのだろうか。
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