堕落家族論
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堕落家族論

鶴亀まよ

私的2024BL超え作品です。

ネタバレ
2024年9月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 行間を読ませるのがすごく上手な作者さんで、明言はされていなくても登場人物の機微が伝わってくる作品でした。もしこれから読む方がいれば、ぜひ時間をかけて大切に読んであげてほしいです。流し読みだと取り零してしまう部分が多いと思います。

当たり前なんですけど、皆それぞれ世間の"当たり前"とは違う部分を持っているはずなのに、どの時代、どの世代にも倣うべき"当たり前"があって、適応しながら上手く生きていかないと、困ったやつとして爪弾きにされる。
そんな経験、きっと大なり小なり誰しもあるのではないでしょうか。
それでも、人と違くても、同じことが出来なくても人は育つし、日々は続く。
ままならない事の方が多いのが人生ってもんですが、折られながら、踏みつけられながら、それでもしぶとく生きていくしかない。
人はそれぞれ弱さを持っていて、感情は複雑で、全くもって正しく生きられる人なんてきっと一握りなんだろうけど、その弱さが細い枝のように人を繋ぎ、支え合っている。
人は知らぬ間に愛を生み、与え、生きていくのだと、最後の藤間の独白でしみじみと感じました。あのラスト、本当に良かったです。

他レビューで「すっきりしない」「なんで好きになったかわからない」「めぐるが可愛くない」などの意見があるようですが、私はそうは思いませんでした。勧善懲悪ものではないので劇的な物語性を求める方には合わないと思いますが、物語はしっかり起承転結ついていて、それぞれに対する解も示されていたと思います。
この物語に登場する人たちはいい意味でも悪い意味でもリアルな人間味を感じるので、ファンタジー的なBLを求める方には合わないのかなーと思います。
めぐるに関しても、子供というよりは1人の人間として描かれている側面が強いので、子供というフィルターを通して読んでしまうと、世間一般的な子供像とは離れているめぐるは可愛くない、と感じてしまうかもしれません。
読み流し向きではなく、ゆっくりそれぞれの人生に思いを馳せながら読むのが向いている本だと思います。
登場人物其々の生き方に作者さんの人生観を感じて、共感できる部分も多かったです。

たとえ転んだって、それでも一歩に変わりない。進み続けることにこそ意味があるのだと、とりあえずは今日を生きてみようと思わせてくれる作品でした。
私は大好きです!ありがとうございました。
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