このレビューはネタバレを含みます▼
2人の始まり方に賛否両論なのは分かります。
オメガバース物は、設定上どうしても「無理矢理」が絡む作品も多いし、私もその点に関しては好きじゃないけど免疫はありました。
ただこちら、「フェロモンにあてられて抗えず」な無理矢理ではなく、
発情期でもないのに 普通にαがΩを自分のものにしたくての無理矢理だったので、
そこでこのαを嫌いになっちゃう人が多いかも。
ただね…
説明不足ではあるけれど、
そもそもこの作品の世界においては Ωが子供を産む道具扱いされていること、
鷹人(α)も家柄的にそう育てられたであろうこと、
子供をつくる為だけにΩを物色してはいたけど、理緒に一目惚れして
でもそれを本人も恋だと自覚出来ずに ただ欲しいから手に入れる、という手段を取ってしまったこと、
理緒を大事にしたいけれど方法が分からず、理緒に嫌われたくない一心で
「理緒が怖がるから会わない」という悪手を取ってしまったこと(しかも5年も耐える)、
それらが何かもう 悲しいというか可哀相というか。
もちろん一番の被害者は理緒だし、無理矢理妊娠出産させられて、子供にも会わせてもらえなくて(望まない出産をしたから 理緒はきっと会いたくないだろうと 鷹人の思い込みで敢えて遠ざけられていたし、理緒も会いたいとは言わなかったし)、5年も軟禁状態だったのだから
こんな酷い話は無いんだけど、
もうとにかく色々がうまくいかなくて、読んでるこちらも心が痛くなりました。
生意気で勝気な理緒に惹かれたのに、無理矢理手に入れてからは恐怖と絶望に震える理緒しか見ていない、自分が壊してしまったのだと気付く鷹人に
かなり心を掴まれてしまいました。
そして最初の一度だけ乱暴にされて傷つけられたけど、それ以降はずっと優しくされていたことを思い出し、自分の孤独を埋めるのは鷹人しかいないのだと認識した理緒。
「そりゃ5年も孤独にさせられたら そう錯覚しちまうわ!」とツッコミが入りそうですが…。
そして可愛い2人の息子理人。
目が覚めたらリビングに鷹人と理人がいて、3人の朝食の用意をしてくれている光景を目の当たりにした理緒の、何とも言えない感動が伝わって、
初めて使われるペアのカップ、コーヒーの香り、ぺたぺたと可愛い理人の足音、当たり前の家族の朝に、この上ない幸せを感じて涙が出そうでした。
衝撃的な経緯があったからこそのラストの感動です。