イルカの耳骨
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イルカの耳骨

独特の分かりにくさが癖になる

2024年9月28日
過去のトラウマから人に尽くしすぎてしまう浅見と、飯を食べることすら忘れる無欲な千晃。メインキャラ二人のこのバランスが絶妙だと思った。
そして物語の省き方然り、絶妙に伏せられていて好き。分かりやすいセリフの言い回しではなかったり、それぞれの性的指向に特に触れることもなければ、千晃がなぜ浅見に惹かれたかについても描き下ろしで初めて登場するくらい、多くを語らない。それが作者様のスタイルっぽくて個人的には大変好きだった。独特分かりにくさが癖になる。作品全体的にごちゃごちゃしていなくて静けさがあり、ミステリアスな感じが漂っていて、不思議な感覚になる(同じ作者様の「あおに鳴く」も同じ感覚になった)。
そして何より「無欲な人の執着」ってたまらない…。「耳骨をちょうだい」ってセリフ、すごいなぁ…と感動した。一生愛してるとかより強烈、愛が重くて深い。面白かった。
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