どうせ捨てられるのなら、最後に好きにさせていただきます
セレン/碧貴子/すらだまみ
このレビューはネタバレを含みます▼
連載版で細切れに読むよりも、完結して単行本をまとめて読んだ時の方がキャラの感情が理解できます。Rシーンや描き下ろしのお茶目な2人も彼らの重要な部分なので、通して読むのがオススメです。
結局、全ての元凶は国王です。王子2人の身分差も、そこから始まった政治不安も王のせいで、子供世代はそれに否応無く巻き込まれます。若い彼らには国や家がのしかかっていて恋愛の自由はありません。リュシーとアニエスがずっと仲が良い婚約者同士だったとしても、王の決断一つで相手は代わるのです。父親の不貞を嫌悪していたリュシーに、婚約者がいながら他の令嬢を側に置くよう仕向けてきたのもまた父親です。王の命令に身動きが取れないながらも策を考えるリュシーですが、言動全てがアニエスを傷つけ思いもしない反撃を受ける事になります。
リュシーの回想で納得できる部分はありますが、自分の口で婚約破棄を告げておいてその同じ日に「私を捨てるのか」と恨むのは勝手すぎるでしょう。普通の令嬢モノならやり直せないタイプの思考です。でも読者が許せてしまうのはビジュアルが良すぎるせいでしょうか(笑)。
ただ嫌な女に思えたリーリエの印象は最後変わりました。一族の未来を背負うプレッシャーの中でリュシーに優しくされ、もうすぐ王太子妃になれるという頂点でいきなり突き放されます。話が違うと憤るのも当然で、父親に言われるまま陰謀に加担します。彼女もまた、王の都合で振り回されるリュシーに振り回された被害者です。そんなしがらみから解放された孤児院では穏やかな性格になれたのは救いです。
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