薔薇のために
」のレビュー

薔薇のために

吉村明美

美しい作品。逸品です。

2014年7月6日
主人公ゆり以外は皆美形の花屋敷家の人々のストーリー。女優で母のしょう子の自由奔放な生き方で振り回される子ども達。姉の芙蓉、兄の菫、弟の葵と突然兄弟姉妹になってゆりの人生が大きく変わる。ゆりが家族になった当初は家族と言っても『血の繋がった赤の他人』みたいだった花屋敷家の人々が、ゆりと関わってから段々本物の家族になってゆく様に思われる。ただの恋愛物ではなく、各々がとても重い過去を背負い、血を吐くような思いを抱いているが、ゆりと関わる事で、少しずつ癒されていく、またゆりも花屋敷家の人々や周りの人々に出会いふれあい成長していくというヒューマンラブストーリー。
ストーリー展開は奥手な主人公ゆりに合わせてゆっくりだが最後まで全く飽きず、キャラ設定は脇の人々も含め各々の個性が際立ち、また詩的な感情表現が素晴らしく、この作者さん独特の世界観。
枕野一郎さんとセリさんがキーパーソン的存在なのは勿論、猫吉さんがこの家族に大きく影響を与える。
鮮烈な印象とは違い、じんわり心に染み込む作風。笑いあり、涙あり、そして暖かい幸せな気持ちになれる。何度読んでも飽きない、本物の逸品といえる作品。絶品です。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!