死にかけ悪役令嬢の失踪~改心しても無駄だったので初恋の人がさらってくれました~
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死にかけ悪役令嬢の失踪~改心しても無駄だったので初恋の人がさらってくれました~

和泉杏花/ささきさ/鈴ノ助

すべてが何処までも美しい

2024年11月3日
まず作画が丁寧で何処までも美しい。背景と言うか、景色が、それだけでも見る価値ある美しさ。ヒロインはヤングケアラー的な家族からの無自覚な搾取を受ける状態にあります。その上、義妹に婚約者を奪われ、継母から作為かどうかはっきりとしませんが、死の直前までに至る仕打ちを受けます。それから救いだし、時間をかけて介抱したのが、初恋の相手であるヒーロー。ヒーローがいなくては絶命したでしょう。ヒロインの家族の酷さは相当なレベルで、しかも無自覚ゆえに、後ろめたさや自責の念も何もない、端から見ても、かなりの腹立たしさ。しかし明確な断罪はありません。ヒロインがそう望まないからです。ヒロインが望めば、性格的に峻烈さのありそうなヒーローが、きっちりやってくれたと思われますが、そうはなりません。過ぎたことを断罪するより、これから先に注力する未来志向なヒロインでした。ロマンスはプラトニックでじれじれです。口づけですら終盤です。ハッピーエンドです。想いをよせる女性とふたりきりで、隔絶された空間にいながら、一切迫ったりしないヒーローでした。むしろ少しは煩悩に悩む姿が見たかったくらいです。とにかく作画も主役の心根も、何処までも美しい作品です。海中の静粛さが絵から感じられるのが、とても素敵でした。
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