毒を喰らわば皿まで【1周年記念版SS付き】
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毒を喰らわば皿まで【1周年記念版SS付き】

十河/斎賀時人

夢中になって読みました

ネタバレ
2024年11月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ とても面白くて最後まで一気に読んでしまいました。
主人公は前世の記憶を思い出しますが、娘への愛は芽生えても人格は元の悪の宰相の要素が強いのか、悪役らしく娘と自分を裏切った王太子とその婚約者であるゲームヒロインに復讐をしていきます。
復讐も分かりやすいざまあではなくて、真綿で首を絞めるようにじわじわと王太子ヒロインサイドの味方を減らし、周囲からの支持を落としていき…とやり方もまさに元悪の宰相!って感じで良かったです。
ゲームの知識チートがあるとはいえ主人公の思い通りに行きすぎに思ってしまうところもありますが、同時にそれだけ元宰相の人心掌握の手腕が優れていると思わせてくれる文章と雰囲気があります。
世界観やキャラクターとその関係性も作り込まれていて、最初は次々と現れる人の名前に辟易としましたがそれを乗り越えればみなそれぞれに共感できるところがあって良かったです。普段脇カプいらない派なのですがこれに関しては脇カプも物語の彩りになっていて面白かったです。
ヒロインの親が娘を売った事実を家族に隠すところとか、贄巫女だったヒロインが王太子の婚約者となってからはよくヒロインできていたなという有様になっていくのも、人間の嫌なリアルさを感じられて良かったです。ただの平民が未来の王妃としての権力を得たと勘違いしたら、調子乗るのも分かるというか。学がないからこそ王族としての責務も分からない、ただ偉い人という認識なのでしょうしね。
ヒロインの姉たちは完全にとばっちりだしやりすぎなので嫌な人もいるでしょうが、個人的にはまあ悪役が主人公だしな、と。
ただBLとしてはもうちょっとloveというか萌えというか、もう一声欲しかったです。
物語としては文句なしに面白かったし、BL要素も楽しめはしましたが、カプ萌えできるまではいけなかったというか。メインカプの関係性はとても美味しかったんですがね〜…なんなんだろう。惹かれる工程がちょっと薄味だったかな。あの二人である必然性もそこまで感じられなかったというか。
SSもメインカプの話でしたが、短かったし結局二人にそこまではまれてないからか、感情は動かされませんでした。
ただ主軸の物語にそれを上回る面白さがあり、面白いお話にBLが味付けされたもの、と考えれば非常に良いものだったと思います。
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