君のいちばんにしてよ【単行本版】【コミックシーモア限定特典付き】
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君のいちばんにしてよ【単行本版】【コミックシーモア限定特典付き】

櫻井タイキ

解釈をひとつ置いておきます↓

ネタバレ
2024年11月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ まず、慶一(受)は「寂しさを人で埋める」という、よくある愛着障害の弊害が出てるという前提で捉えた方が解釈しやすいと思います。そこからくる貞操観念の緩さも、「他人と食事をすると浮気になる世界に自分が来てしまった」に置き換えるとかなりイメージしやすいと思います。つまり、「この世界では1人の相手としか食事をしないというのが当たり前で、それは理解しているけど、理歌がいない時でも孤食は寂しいし、なんなら理歌と毎回食べてたら鬱陶しがられないかな」のような価値観が慶一の根本にあると。
でも2人は会話をしなかったため、理歌はこの世界の普通の価値観で慶一を量るのに「この関係が崩れるくらいなら」と言動だけは慶一に合わせていた。つまり、2人とも「相手とずっと一緒にいるため」に各々の価値観でズレた対策をしてしまっていたわけです。

そして、思いが通じあった後も慶一からすれば「他人と食事をするのはタブーとされているこの世界で、理歌が誰と食事をしても嫉妬心のようなものを感じられない自分は欠陥品で、この世界で"恋人"と呼ばれる関係に自分は当てはめられない」みたいに感じているんですよね。でも、作中でも慶一が言っている通り、「自分の価値観はズレているけど、理歌が嫌がることは絶対にしたくないし、それが恋人という枠に当てはまらなかったとしてもずっと一緒にいたい。」が全てなんですよね。それを理歌は理解したからこそ、「やっぱり自分以外とは食事して欲しくない」と安心してこの世界の独占欲を慶一にぶつけられたんだと思います。

長くなりましたが、「価値観が違うことは分かりきっているけど、どんな形であれ一緒にいたい」というのは、もはや普通に"愛"だと思いました。10年という長い時間すれ違ってしまったけど、蓋を開けてみれば2人が抱えていたのは形が違うだけの同じ愛だったんだと思うと私は素直に喜ばしいことだと思えました。
この作品を上手く咀嚼出来なかった方に少しでも届けば良いなと思います。
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