このレビューはネタバレを含みます▼
■原作小説版読了済です。■家系ではなく神に選ばれた5人の王が統べる国を舞台として紡がれる、一人の少年が主人公の大河ドラマ。タイトルから群像劇と誤認する方がいそうですが、本編はあくまでヒソク=セージの来し方行く末を、個人的な愛や他者への情、憎しみ、国全体の問題を絡めながら描くお話だと思います。■恋愛ものと考えるならば、ルリやグリニッジ、赤の王は当て馬ポジだと思うのですが、(前者二人は特に)それだけでないそれぞれの事情があり、人間のこころは自分でもどうにもならない部分があるよなぁと思います。■事態がこじれるきっかけの恋や、肉親への執着に近い愛、国を揺るがす陰謀、千年も前に国を創ったとされる不思議の力を持つ初代王たちの幻想、時を行き来するセージの視点と成長、世界観やティンクチャーなどの用語を覚えつつ何度も読み返してやっとわかる場面や伏線。多層構造のうつくしい織物のような物語です。困惑と稚拙な頑固さを感じる一巻の表紙と比較して、愛と恋と苦悩に揉まれた九巻のセージの大人びてなんと美しいこと。■コミカライズも是非とも完結まで続いて欲しい。応援させていただきたいと思います。