このレビューはネタバレを含みます▼
男同士で恋愛することを真摯に掘り下げ表現し且つエンターテイメントに仕上げてある素晴らしい作品はほかにも沢山あります。ですがその中で、この作品でしか私は出会わなかった視点がありました。シリーズ通しての終盤で、ストレートでありながらゲイとの恋愛に揉まれてきた主人公が、ゲイである相手に突きつける断定。ー ゲイであるお前はどんなに真剣で苦しくとも本来の性愛の相手である男を追っているに過ぎず、自分が女だったら洟も引っかけなかったくせに。そんなお前には、ストレートでありながら男である相手への性愛と情愛を抱えた自分の気持ちは解らない、解ってたまるか。 ーそして、その思いを別の言葉で言い当てた「片想い」。ゲイのストレートへの片想いでは無く、ストレートのゲイへの情愛が伝えようが無いという意味での「片想い」という見方。今まで読んだ同様の葛藤を描いたほかの作品では、"性別を超えた愛"や"本来の性嗜好を変えるほどの愛"のような解決を見出していることが多かったように思いますが、この作品では、生まれついての性愛の対象は後天的に変えられるものでは無いという現実的な前提と戦い、その上で、人間が本来の性愛の対象では無い人間からの想いをどう受け止め、その人間への想いをどう返していけるのかということの答えを求めているように感じました。同様の関係性を扱ったほかの作品とは、似ているようで構造的に違うと感じました。